
棚卸しって、材料も全部数えないとダメなんですか…?

いいえ。日々在庫管理をしていれば、そこまでやらなくて大丈夫ですよ
ハンドメイド販売を続けていると、
「棚卸しはどこまでやればいいの?」
「材料やパーツも全部数えないといけない?」
「確定申告の時期が近づくと、毎年不安になる…」
そんな悩みを感じたことはありませんか。
実は、棚卸しはすべてを完璧に数える作業ではありません。
日々の在庫管理や売上管理ができていれば、棚卸しや確定申告は、特別に大変な作業にはならないのです。
この記事では、オンライン販売やイベント出店を経験してきた管理人が、実際に行っている在庫管理・棚卸しの考え方をもとに、
1.ハンドメイド作家の棚卸しはどこまで必要なのか
2. やらなくていい管理
3. 確定申告につながる、無理のない管理方法
を分かりやすく解説します。
「年末に棚卸しで地獄を見たくない」そんな方にこそ、読んでいただきたい内容です。
棚卸しとは?
棚卸し(たなおろし)とは、期末時点で手元に残っている在庫を確認する作業のことです。
難しく聞こえるかもしれませんが、ハンドメイド作家の場合、棚卸の目的はとてもシンプルです。「今、どの商品が、いくつ残っているのか」、「その在庫はいくら分なのか」、この2点を把握するために行います。

棚卸し=すべてを数え尽くす作業ではない
「棚卸し」と聞くと、
といったイメージを持つ方も多いかもしれません。ですが、棚卸しは完璧さを求める作業ではありません。日々の在庫管理ができていれば、棚卸しはその結果を確認する作業になります。

小さな丸カンやビーズまで完璧に数えようとすると、正直なところ、管理そのものが負担になってしまいます
ハンドメイド作家の棚卸しで一番大切なこと
ハンドメイド作家の棚卸しで、特に大切なのは『完成品の在庫』です。
◎すでに販売できる状態の商品
◎実際に売上につながる在庫
これらが、
が分かっていれば、棚卸しとしては十分な状態です。

在庫金額は「販売価格」ではなく「原価」で考える
棚卸しで考える在庫金額は、商品価格(販売価格)ではありません。制作にかかった 原材料費(原価)ベース で考えるのが基本です。
例えば、
- 商品価格:3,000円
- 原材料費:500円
この場合、棚卸しで見る金額は 3,000円ではなく500円になります。利益は、商品が売れて初めて確定するものなので、在庫の段階では含めません。

材料やパーツは、どこまで棚卸しすればいい?
材料や細かいパーツについては、すべてを個数単位で棚卸しする必要はありません。
多くのハンドメイド作家の場合、
この状態であれば、材料については「把握できている」状態と考えて問題ありません。
日々の在庫管理は、棚卸しを『年末の地獄』にしない作業
日々在庫管理をしていない場合、年末にまとめて棚卸しをしようとすると、
「何がいくつあるか分からない…」「数えるだけで時間がかかる…」「強いストレスになる…」という状況になりがちです。
一方で、日々在庫管理をしていれば棚卸しは、数値と実物を照らし合わせるだけになります。

棚卸しは確定申告につながる大切なステップ
棚卸しは、確定申告で正しい所得を出すための大切なステップです。在庫管理と棚卸ができていれば、確定申告はその数字をもとに進めるだけです。確定申告の具体的な手順については、別記事で詳しくまとめています。よければそちらもご覧ください。
在庫管理は「オンライン販売」と「対面販売」で分けて考える
ハンドメイドの在庫管理は、販売方法ごとに分けて考えるのがポイントです。
オンライン販売と対面販売では、売上の入り方・記録の残り方が大きく異なります
オンライン販売の在庫・売上管理
オンライン販売(Creema・minneなど)では、
- 商品ごとの在庫数
- 売れた日時
- 販売価格
- 振込金額(後日入金)
といった情報が、各販売サイトの管理画面に自動で残り、データをダウンロードできます。
そのため、『売れたら在庫が減る』、『売上履歴を後から確認できる』という点で、管理のハードルは比較的低めです。
ただし注意したいのは、「入金額=売上」ではないという点です。手数料や送料が差し引かれるため、確定申告では「売上」と「入金」を分けて考える必要があります。
対面販売(イベント出店)の在庫・売上管理
一方、イベント出店などの対面販売では現金のやり取りが発生するため、管理方法が少し変わります。
売上をメモする
管理人はイベント当日に必ず、下記の情報を簡単な表でメモ書きとして記録しています。

イベント出店時の売上は、伝票でなくても問題ありません。
当日その場で「いつ・どこで・何が・いくら売れたか」が分かる簡単なメモを残しておけば、売上記録として十分です
キャッシュレス利用も必ずメモしておく
対面販売でも、キャッシュレス決済が増えてきました。
そのため、『現金売上』『キャッシュレス売上』を区別するため、キャッシュレス利用の場合は備考欄にメモしています。
この記録があることで、『後日の入金確認』『売上の二重計上防止』『確定申告時の説明資料』として役立ちます。
メモ書きは「証明資料」としても有効
ハンドメイドイベントやマルシェなどの対面販売では、オンライン販売のような自動記録が残りません。
そのため、イベント当日の売上メモや、商品名・数量・金額が分かる表を残しておくことは、確定申告で指摘を受けた場合の説明資料にもなります。
形式は完璧でなくても問題ありません。「いつ・どこで・何が売れたか」が分かることが大切です。
在庫管理は「売れたら減らす」を徹底する
オンライン・対面販売どちらでも共通して大切なのは、「売れたら必ず在庫を減らす」
この一つだけです。この積み重ねができていれば、年末に慌てて数える必要がなく⇒棚卸がスムーズ⇒確定申告も楽になる、という流れにつながります。

在庫管理は「完璧」より「続けられる形」で
在庫管理は、細かくやりすぎると続きません。
特にハンドメイド作家は、制作、出品、イベント準備だけでも忙しいものです。サイト販売も行っていれば作業量もさらに多く大変です。
「毎回必ず記録する」この一点を守れる方法を選ぶことが、長く続けるコツです。
在庫・売上をまとめて管理する方法
Excelで在庫・売上をまとめて管理する
私はExcelで在庫・売上をまとめて管理しています。管理人は、在庫管理・売上管理を Excelで一元管理しています。
理由はとてもシンプルで、オンライン販売・対面販売・委託販売と、販売経路が増えても一つの場所で全体を把握できるからです。

Excelは3つのシートで管理しています
Excelは、用途ごとに3つのシートに分けています。
1. 商品・在庫・売上を管理するシート
1つ目のシートでは、商品単位での在庫と売上を管理しています。
主な項目は、
各項目は入力式、販売媒体はチェックを入れるだけで分かるようにしています。総数は、個別の個数や売上を入力すれば自動的に分かるようにしています。これで「今年どれくらい動いたか」をざっくり把握できます。
ここでの売上は、販売サイトの手数料を含めていません。あくまで全体像を感覚的につかむための数字として使っています。正確な売上や利益については、会計ソフトで管理しています。
2. 対面販売の売上メモを反映するシート
2つ目のシートは、イベント出店などの対面販売でメモしたものをデータとして残します。
イベント当日にメモした内容をもとに、
を、イベントの出店日ごとに1年分をまとめて記録しています。
売れた個数や売上については、1つ目のシートにも反映させており、在庫数や売上の総数が常に一致するようにしています。
メモを万が一紛失してしまったとしても、このシートがあることで、『現金売上』と『キャッシュレス売上の確認』『入金漏れの防止』『確定申告時の説明資料』としても使えます。

委託販売でも、売上が確定した時点で、対面販売と同じ考え方で在庫と売上を反映しています
3. 購入地域(都道府県別)をカウントするシート
3つ目のシートでは、購入者の地域を都道府県別にカウントしています。これは必須ではありませんが、自分の商品はどの地域で買われやすいか?の出店イベントを選ぶ際の判断材料として、とても役立っています。
「この地域からの購入が多いから、次はこのエリアのイベントに行ってみようかな?委託をしようかな?」といった判断がしやすくなります。
Excel管理のメリット
Excelで管理することで、下記のメリットがあります。
特別な機能は使っていません。続けられるシンプルさを重視しています。
在庫・売上管理に使えるExcelひな形をダウンロードできます
在庫・売上管理Excelひな形をダウンロード (74.5KB)

私が実際に使っている構成をもとにした在庫・売上管理用のExcelひな形を用意しました。一から自分で作るのが大変だなという方は、そのまま使ってください
スマホアプリを使って管理する
Excelでの管理は自由度が高く、一度ひな形を作ってしまえばとても便利ですが、「スマホで手軽に入力したい」「外出先でも管理したい」という方には、アプリを使った管理方法も選択肢のひとつです。
ここでは、在庫・売上管理に使えるアプリとして、「サッカノカンリ」をご紹介します。

「サッカノカンリ」とは?
「サッカノカンリ」は、ハンドメイド作家さんや個人事業主向けに作られた、在庫・売上管理をまとめて行えるスマホアプリです。※iPhoneアプリのみ
iPhoneやiPadから作業を行うことができ、パソコンを開かなくても管理できる点が特徴です。
主な特徴は次のとおりです。
オンライン販売・対面販売の売上をまとめて管理でき、売上や在庫の状況をスマホから一覧で確認できます。
プレミアムプランもあり、料金は月額300円(税込)、または年額3,000円(税込・一括)で、30日間の無料トライアルがあります。自分の作業フローや商材に合わせて項目を調整できるため、
管理画面を自分好みに最適化できる点が特徴です。
※料金や提供内容は変更される可能性があるため、最新情報は公式案内をご確認ください。
まとめ
ハンドメイド作家の棚卸は「日々の管理」がすべて
ハンドメイド作家の棚卸しというと、「材料も全部数えないといけないの?」「年末に何時間もかかりそう…」と不安になる方も多いかもしれません。
ですが実際には、
この日々の在庫管理ができていれば、棚卸しは年末に慌てて行う作業ではなく、「数字と実物を確認するだけ」の作業になります。
特に年間売上が1,000万円以下の免税事業者のハンドメイド作家さんの場合、棚卸しは完璧さよりも継続できる管理が大切です。
無理に細かくやろうとせず、自分が続けられる方法で管理していくことが、結果的に確定申告を楽にし、制作や販売に集中できる環境につながります。
『在庫管理 → 棚卸し → 確定申告』は、すべて一本の線でつながっています。「年末に棚卸しで地獄を見ないために」、今日からできる管理を少しずつ整えていきましょう。


